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このようなLENKAの成果を受けて、現在は新たにMOM (Monitoring-On growout fish farms-Modeling)という管理システムが導入されようとしている。MOMはこまでのように養殖規模や収容尾数などではなく、養殖場の環境そのものとくに影響が累積的に現れる底質の状況を管理の対象としたところに大きな特色を持っている。所定のガイドラインに沿ったモニタリングと底質環境の簡便なモデルを組み合わせながら、R-methodのような解析モデルよりもっと現実的・実践的に養殖場の環境管理を進めることができると考えられている。図22にシステムの概要を示したが、モデルによる現状の診断にもとづいて汚染の進行の程度を3段階に区分し、汚染が進んでいる場所ほど監視(SURVEILLANCE)の頻度を高めるようになっている。すなわち、色や臭い、粘度や生物の有無など簡単に観察できるような項目の調査はすべての場所で毎月1回行うが、化学分析や生物調査については場所の状況に応じてその頻度が決定される。汚染が進み始めているような場所では一般に化学分析は生産に要する期間(たとえば1年)に2回、生物調査は長期的な変化を見るため2年に1回が基準となっている。負荷のレベルが日本に比べてまだかなり小さいのでこうした管理システムをそのまま適用することは難しいが、基本的な理念については参考になる点が多いように思う。

3.13 ベルゲン大学漁業・海洋生物学科および海洋学科

漁業・海洋生物学科のAksnes教授とGiske博士は、ノルウェー西岸のフィヨルドに生息する魚類(図23)の収容力がどのような要因に規定されているかについて、観測と生態系モデリングの両面から研究を進めておられる。これまでに分かってきているのは、フィヨルドの外からシルを越えて流入する沖合水によって輸送されるプランクトンの量がフィヨルド内の生産よりも収容力に大きな寄与をしていることである。そのため動物プランクトンの生物量や漁獲量はいずれもフィヨルドの湾口に近いほど大きく、移流による動物プランクトンの補給量の減少にしたがって奥部で減少する。沖合水との海水交換は物理的な外力の変化に応じて時間的に大きく変動するので、それがフィヨルドの環境収容力を不安定にする主な要因となっている。フィヨルドをマダラなどの資源培養の場として利用する際には、このような生物生産システムの特性を定量的に把握しておくことが必要である(3.12参照)。このような生態系の解析のほか、魚類の摂餌行動や回遊過程を最適化手法を用いてモデル化するようなユニークな試みもなされている。
Aksnes教授はまた、10年ほど前に深層水の汲み上げによる栄養添加の生物生産や生態系への影響に関する実験的な研究にとりくみ、下層水(フィヨルドの34m深から揚水)

 

 

 

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